SHIROTA Gallery シロタ画廊

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白鳥信之展
-自然と人生-

2011年11月7日(月)-19日(土)
AM11:00-PM7:00(最終日のみ5:00まで)日曜日休廊

 私は三十五歳を過ぎて画家になることを決意し、制作を続けてきた。絵を描くことが自分を生かす道であることを信じて、人生半ばの遅い選択だったが、三十年が過ぎた現在でもこの仕事は天職であるとためらいなく言うことができるのだ。
独習・独立・独歩を貫いて励んできたが、単純化された大きな様式の中に人間という「実在」が幻ように立ち現われてくる、想像の裡に見えている作品はいまだ描くことはできずにいる。一つ所にとどまって変わらぬ制作を繰り返すばかりだが、ただ天命のままにこの道を行くのである。 
白鳥信之

 

  山間を流れる川に沿って平坦な耕地が続き、その中に廃屋とも思えるような古い民家が点在し、農夫が遠くで動めいているのが見える。
 地方ならどこにでもある平和な光景だが、そのような風景が語りかけてくるものに強く惹かれて、私はここ十数年幾度となく”いなか”の景色と対峙して見入り、写生を続けてきた。その度に自然の中で営々と続く人生のことや、すべてのものは変化しすぎてゆくという無常の思いが胸中を去来して、私の心は静かな風景と融け合って空しくなるのである。そして、もし自分が見ているように、感じているようにこれを描くことができるのなら、人生という存在が意味するものすべてが、表現できるのではないかと考えるのである。

「夏の風景」 キャンバスに油彩 80.3×130.3㎝ 2011年

 北海道留萌市小平の海岸で拾った小石は、長い間波に洗われて美しい。作品になって「石」の存在感はさらに端的なものになった。
 描く主題はありふれたものだが、対象を熟視しさらに見て見抜くなら、画家の目は「物」の本質に届いて、作品は象徴にまで達するのだと思う。

「小石の静物」 キャンバスに油彩 91×91㎝ 2011年

 森の静寂の中では、木々には感情があって言葉を語り合っているように感じられる。自分というものは消えて「無」になり、森の中に同化する。

「木立図」 各々、キャンバスに油彩 116.7×72.7㎝ 2001-2006年

  数年ごとに木立の中に立っている父を描いてきたが、それは肉親であるからではない。父は森を育てるために枝打ち、間伐、下草刈りを行ってきた。日々の勤労が心を平明なものにして、流す汗が魂を浄化し、人間を確固たる典型に鍛えるのだ。人は自然の中で働き、死んで、その存在は永遠の虚無の中に消えていく。私は、肉体はすでに滅んで、その霊が木立のようになって森の中に佇んでいる、自然の中の「死」の影響として父を描いてきたのだ。

「森の墓標」 キャンバスに油彩 130.3×162.2㎝ 2005年

 小林秀雄の著書「私の人生観」の中の一節を私は覚えている。
『画は、何も教えはしない、画から何かを教わる人もいない。画は見る人の前に現存していれば足りるのだ。美は人を沈黙させます。どんな芸術も、その創り出した一種の感動に充ちた沈黙によって生き永らえて来た。どの様に解釈してみても、ついに口を噤むより外はない或るものにぶつかる、』。(小林秀雄「私の人生観」)人は美を解釈し説明しようとする。だが、確かに『美しい「花」がある、「花」の美しさという様なものはない。』(小林秀雄「当麻」)のだ。

<画歴>

白鳥信之(しらとり のぶゆき)

1945 北海道喜茂別町生まれ

主な個展歴
1986 大同ギャラリー(札幌)
1989 ヤマハギャラリー(浜松・名古屋・東京)
1991 大同ギャラリー(札幌)
1994 資生堂ギャラリー(東京)/ 器のギャラリー中森(札幌)
1996 NHKギャラリー(札幌)
1997 器のギャラリー中森(札幌)
1998 大同ギャラリー(札幌)
2001 大丸藤井セントラルスカイホール(札幌)
2002 大同ギャラリー(札幌)
2003 器のギャラリー中森、テンポラリースペース(札幌)
2006 札幌時計台ギャラリー(札幌)
2011 ギャラリーエッセ(札幌)/ シロタ画廊(東京,銀座)

お問い合わせは  shirota-gallery@mqc.biglobe.ne.jp

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