Room1
2009.06.01

岩切 裕子 展 6月の家 -domus junius-

2009年6月1日(月)-6月13日(土) A.M.11:00~P.M.7:00 (日曜休・最終日P.M.5:00)

「6月の家-domus junius-」

君や知る レモンの花咲く
濃緑の葉陰にオレンジは黄金色に輝き
蒼き空よりやわらかなる風の吹く
ミルテの花は白く静謐に 月桂樹は気高くそびえ
君よ知るや 南の国
かの地へ ともに行かまし

ミニヨンの歌(ゲーテ『ヴィルヘルム・マイスター』より 岩切裕子訳)

これは1815年に出版されたゲーテの詩集に収められたもので、はじめてイタリアを訪れたゲーテが、南の国の光溢れる色彩豊かな情景に衝撃を受け、その後も繰り返し焦がれ続けた様子がうかがえます。

色とりどりの光の粒がきらきらとこぼれ落ちるようなこの詩は、「君よ知るや 南の国」という音楽的な一節とともに、まだ海外旅行の経験もない高校生の憧れと想像力をかきたてるに充分すぎるほどでした。

この詩は3つのパラグラフから構成されていて、あとには、
「君や知る かの家
円柱は屋根を支え 広間はきらきらと輝き
その部屋は仄かに光をたたえ
立ち並ぶ大理石像はわれを見つむる」
と続きます。

旅行で訪れた異国の家の白い壁、幼いときに住んでいた家の青い屋根―
「6月の家」は、いまは失われ、あるいはただ通り過ぎてしまったものを手繰りよせる旅の風景です。