岩切裕子展 Yuko IWAKIRI

閲覧室の机の上に置かれた１冊の書物を手に取るときのように
広いホールに置かれた１台のピアノから奏でられる　バッハのパルティータに耳を傾けるときのように
喧噪や混沌から逃れて　ぱらりとページを繰るごとに　規則正しく音が刻み込まれるごとに　張りつめた空気が　やがて心地よいクッションとなって疲れた四肢を包み込む　からからに乾いて　放置されたままのいくつかの記憶のフラグメントを拾いあげて　またひとつ、静謐な世界を自分のかたちにしていこう
ほんの少しまどろ微睡んだあとで

　＜作者コメント＞
３つ違いの弟がまだ幼稚園にも入らない頃、毎日のように絵本を作ってやったり、即興で作った物語を寝る前に聞かせたりしていました。
それがトラウマになったのか、弟はすっかり活字離れしてしまいましたが、私の方は依然として、本を作ることへの憧れを暖め続けたままです。
この夏、ベルギーで製本を修得された方に教わりながら、自分で糸をかがって小さな版画集を作ってみようと思っています。
とりあえず自分のための１冊を、どんなものにしようか思案中です。

岩切裕子　略歴
1961年　東京都渋谷区生まれ
1988年　多摩美術大学大学院美術研究科終了（木版画専攻）
日本版画協会協会賞受賞　準会員推挙
日韓現代版画交流展　国立美術会館　ソウル市　韓国
1989年　平成元年度芸術家国内研修員
1992年　日本版画協会第60回準会員記念賞受賞
「木版画?明治末から現代?」展（練馬区立美術館）
1992年　”Taejon International Print Exhibition”
(in Taejon, South Korea)　テジョン、韓国
1996年　日本版画協会準会員優作賞受賞　会員推挙
「静謐、躍動-木版の現在-現代の版画II」展（東広島市立美術館）
Exhibition of “100 Members of Japan Print Association”
(in Skofja Loka, Slovenia)　スコフィア・ロカ城、スロヴェニア
2000年　「美術家の創るやさしさの風景」展（宮城県石巻文化センター）
2001年　平成12年度文化庁買上優秀美術作品
第35回現代美術選抜展（岐阜、愛媛、岡山、青森）

1990年　’92 ’94 ’96 ’98 ’00 ’03 個展　シロタ画廊

現　在：　日本版画協会会員、日本美術家連盟会員

作品収蔵： 町田市国際版画美術館
宮崎県立美術館
相生森林美術館
ワシントン市立美術館