Room1
2008.07.07

高橋一昭 展

2008年7月7日(月)-7月12日(土)
A.M.11:00~P.M.7:00 最終日~P.M.5:30

 

お問い合わせは  shirota-gallery@mqc.biglobe.ne.jp

森の起源

2008年 242x162cm キャンヴァスに油彩

 現在、抽象絵画を通して精神性について考えています。抽象絵画に取り組み始めてからも、ルーヴル美術館に展示されている絵画にはいつも惹かれます。特にもレオナルド・ダ・ビンチ、ヴェルメール、ファン・アイク兄弟などによって描かれた作品は、単なる人物や風景といったモチーフの再現という域を超えて、神秘的な静寂感の漂った絵画だと思います。
この神秘的な静寂感が精神性に繋がるのだと思いますが、神秘的な静寂感を色彩の組み合わせだけを使って表現出来れば絵画史の一歩前進だと思います。
 絵画史において、抽象絵画の起こりは画期的な出来事だと思います。その発端は19世紀にフランスで写真技術が発明された時に遡るのではないかと思います。当時の画家達が絵画の目的を写真技術では出来ないイメージを求め、それが印象派絵画の起こりにつながったのだと思います。印象派達によって絵をどのように描くかというビジョン(コンセプション)が生まれ、絵画にとってそのビジョンがいかに大切であるかが、その後の絵画史に克明に刻み続けられていると思うのです。この絵を描くためのビジョンこそが抽象絵画をも生み出すにいたった人間の尊い精神活動だと思います。
20世紀の美術運動は、人間の精神活動や心の問題と真剣に向かい合っていた時代だと思いますが、後期印象派のゴーギャン、ゴッホ、セザンヌ達の作品を見ていますと、彼らの作品が抽象絵画への導き手となり、抽象絵画が生まれ来た事がよくわかる作品だと思います。
私は抽象作品を制作する前に必ず写生を十分にします。それは絵画史において絵画表現を進化させて来た原動力が写生(デッサン)だと思うからです。そして絵を描くためのビジョンも深い精神性も、徹底した写生(写実主義)の中から生まれて来たものだと強く思っています。

 森や木立の寄り添う川辺、野原や雑木林などで写生をするのが好きです。そんな自然の中で心や魂との対話を大切にしながら写生(デッサン)を積んで集めた印象を、色彩の組み合わせに還元しながら精神性を表現することができたら幸いだと思って制作を続けております。

高橋 一昭